第5章: 回転運動
5.1 角運動量
角運動量 \( \vec{L} \) は、物体の回転運動における「運動の量」を示す物理量です。物体の質量分布と速度に依存し、次のように定義されます:
ここで、\(\vec{r}\) は回転中心から物体への位置ベクトル、\(\vec{p}\) は物体の運動量です。角運動量はベクトル積によって計算されるため、回転軸に対して垂直な方向を持ちます。角運動量が大きいほど、物体は回転し続ける傾向が強くなります。
5.2 トルク
トルク \( \vec{\tau} \) は、回転運動を引き起こす力の効果を表す量であり、次の式で定義されます:
ここで、\(\vec{r}\) は力の作用点から回転中心までの位置ベクトル、\(\vec{F}\) は作用する力です。トルクの大きさは、力の大きさ、力の作用線までの距離、そしてそれらの間の角度に依存します。トルクは、回転を引き起こす能力の尺度です。
例として、ドアを開けるとき、ドアノブを遠くから押すほど小さな力で開けることができるのは、トルクが大きくなるためです。
5.3 回転運動のエネルギー
回転運動をする物体には運動エネルギーが存在し、それは以下のように表されます:
ここで、\(I\) は慣性モーメント、\(\omega\) は角速度です。慣性モーメントは、物体の質量分布と回転軸からの距離によって決まり、物体が回転しにくい度合いを表します。例えば、重いハンマーを回転させるのは、軽い棒を回転させるよりも難しいです。
5.4 剛体の回転
剛体とは、外力が加わっても変形しない理想的な物体を指します。剛体の回転運動では、すべての点が一定の角速度で回転します。重要な物理量として、回転軸に対する各点の距離と質量の積を合計した慣性モーメント \( I \) があります。
慣性モーメント \( I \) は次の式で計算されます:
ここで、\(m_i\) は各質点の質量、\(r_i\) は回転中心からその質点までの距離です。剛体の回転運動を解析する際には、この慣性モーメントが非常に重要な役割を果たします。
5.5 角運動量保存の法則
角運動量保存の法則は、外部からトルクが作用しない限り、閉じた系における総角運動量が一定であることを示しています。この法則は以下のように表されます:
この法則によって、回転する物体の角速度や回転方向の変化を予測できます。例えば、フィギュアスケーターが回転中に腕を引き寄せると、慣性モーメントが減少し、角速度が増加します。これは角運動量が保存されるためです。