第4章: 運動量と衝突
4.1 運動量の定義
運動量は、物体の運動状態を示す重要な物理量です。運動量 \( \vec{p} \) は物体の質量 \( m \) と速度 \( \vec{v} \) の積で表され、次の式で定義されます:
\(\vec{p} = m\vec{v}\)
運動量はベクトル量であり、物体の移動する方向を持ちます。物体の質量が大きいほど、また速度が速いほど運動量は大きくなります。たとえば、同じ速度で動くトラックと自転車では、トラックの方が質量が大きいため、運動量も大きくなります。
4.2 運動量保存の法則
運動量保存の法則は、外部からの力が作用しない閉じた系で総運動量が一定であることを示します。これは次のように表されます:
\(\sum \vec{p}_{\text{初}} = \sum \vec{p}_{\text{後}}\)
ここで、\(\sum \vec{p}_{\text{初}}\) は衝突や相互作用前の全物体の運動量の総和、\(\sum \vec{p}_{\text{後}}\) はその後の全物体の運動量の総和です。これにより、衝突などの現象で運動量がどのように変化するかを予測できます。
例えば、氷の上でお互いにぶつかり合う二つのスケーターがいるとします。この場合、ぶつかる前後の全体の運動量は等しいままです。
4.3 衝突の種類
衝突は、衝突後の物体の運動エネルギーが保存されるかどうかによって、主に二つのタイプに分類されます。
- 弾性衝突: 衝突前後で運動エネルギーが保存される衝突。運動量だけでなく運動エネルギーも保存されます。例えば、ビリヤードの球同士の衝突がこれに該当します。
- 非弾性衝突: 衝突後、運動エネルギーの一部が熱や音などに変わるため、運動エネルギーが保存されない衝突。例えば、粘着性の物体同士がくっついてしまう衝突がこれに当たります。
4.4 衝突の解析
衝突の解析には、運動量保存の法則を主に使用します。特に弾性衝突では、運動量保存とエネルギー保存の両方の法則を用いて、衝突後の各物体の速度やエネルギーを求めます。
非弾性衝突の場合、運動エネルギーの一部が他の形態のエネルギーに変換されるため、エネルギー保存の法則は適用されませんが、運動量保存の法則は依然として適用されます。
例えば、2台の車が衝突した後、車同士がくっついた場合、その後の運動状態を予測するためには、衝突前後の運動量を計算し、それが保存されていることを確認します。