第3章: エネルギーと仕事
3.1 力と仕事
仕事は、力をかけて物体を移動させる際に行われるエネルギーの変換です。物理学では、仕事 \(W\) は次の式で計算されます:
ここで、\(\vec{F}\) は物体に作用する力のベクトル、\(\vec{d}\) は物体が移動した距離のベクトル、\(\theta\) は力の方向と移動の方向との間の角度です。力と移動距離が同じ方向である場合、\(\cos\theta = 1\) となり、仕事は最大となります。
たとえば、本を水平な机の上で一定の速度で動かすとき、動かす方向に力が加えられ、その力と移動距離により仕事が行われます。
3.2 運動エネルギーと仕事の関係
運動エネルギーは、運動する物体が持つエネルギーです。質量 \(m\) の物体が速度 \(v\) で運動しているとき、その運動エネルギー \(K\) は次の式で表されます:
ここで、\(v\) は物体の速度です。この運動エネルギーは、物体の速度が大きくなるほど、また質量が大きくなるほど増加します。
「仕事とエネルギーの定理」によれば、物体に対して行われた仕事の総量は、その物体の運動エネルギーの変化に等しいです。これは次の式で表されます:
例えば、静止している物体を一定の力で押すと、その物体は加速し、速度が増すにつれて運動エネルギーが増加します。加えた力による仕事が運動エネルギーの変化として現れます。
3.3 ポテンシャルエネルギー
ポテンシャルエネルギーは、物体がその位置や配置によって持つエネルギーです。重力ポテンシャルエネルギーは、質量 \(m\) の物体が高さ \(h\) にあるとき、次の式で表されます:
ここで、\(g\) は重力加速度です。このエネルギーは、物体を持ち上げる際に行われた仕事と等しく、物体が元の位置に戻る際には再び仕事として解放されます。
また、ばねのポテンシャルエネルギーは、ばねが変位 \(x\) したときに生じるエネルギーであり、次の式で表されます:
ここで、\(k\) はばね定数です。このエネルギーは、ばねが縮んだり伸びたりする際に、物体に力を加える能力を示します。
3.4 エネルギー保存の法則
エネルギー保存の法則は、エネルギーが形を変えたり、他の物体に移動したりしても、その総量は変わらないという基本的な物理法則です。これは、エネルギーが決して消失せず、常にどこかに保存されることを意味します。
エネルギー保存の法則に従うと、運動エネルギー \(K\) とポテンシャルエネルギー \(U\) の総和は常に一定です。この関係は次の式で示されます:
例えば、自由落下する物体では、高さが減少するにつれて重力ポテンシャルエネルギーが減少しますが、その分運動エネルギーが増加します。地面に到達するまでの全過程において、エネルギーの総和は一定です。
これは物理学における非常に重要な原理であり、自然界のさまざまな現象を理解する基盤となっています。