第1章: 運動の記述
1.1 位置、速度、加速度
物体の運動を理解するためには、位置、速度、加速度の概念が基本です。
物体の位置は、座標系における位置ベクトル \( \vec{r}(t) \) で表されます。例えば、三次元空間では次のように表現できます:
ここで、\( x(t), y(t), z(t) \) は時間 \( t \) における座標成分を表します。物体の速度 \( \vec{v}(t) \) は位置ベクトルの時間微分として定義され、運動の速さと方向を示します:
さらに、加速度 \( \vec{a}(t) \) は速度の時間微分として定義され、運動の変化率を示します:
これらの量は、運動の方向と変化を記述するために非常に重要です。位置、速度、加速度はベクトル量であり、それぞれの成分が運動の詳細を示します。
例: 自由落下運動
自由落下運動は、物体が初速度 \( \vec{v}_0 \) で始まり、重力加速度 \( g \) のみが作用する場合の運動です。この運動では、加速度は常に一定であり、次のように表されます:
ここで、下向きの方向を負と定義しています。速度と位置は次のように変化します:
例えば、高い建物からボールを落とした場合、ボールは重力により加速度を受けて落下し、その速度は時間とともに増加します。ここで、落下中の時間と速度の関係や、位置の変化が示されます。
1.2 運動の種類
物体の運動にはさまざまな種類があり、それぞれ特有の特徴があります。以下に代表的な運動の種類を紹介します。
- 直線運動: 一次元空間における運動で、速度や加速度が一定の場合があります。等速度直線運動では速度が一定であり、等加速度直線運動では加速度が一定です。
- 平面運動: 二次元空間での運動です。放物運動では、物体が斜めに投げ出されると、重力の作用により放物線を描きます。
- 円運動: 物体が一定の速度で円軌道を描く運動です。等速円運動では、物体は円周上を一定の速さで回り続け、向心力が中心に向かって作用します。
例: 放物運動
放物運動は、物体が初速度 \( \vec{v}_0 \) で斜めに投げ出され、その後重力の影響を受けて放物線状の軌道を描く運動です。この運動は、水平成分と垂直成分に分けて考えることができます:
- 水平運動: 等速度運動で、速度成分は一定です。
式: \( x(t) = v_0\cos\theta \cdot t \) - 垂直運動: 等加速度運動で、重力加速度 \( g \) が下向きに働きます。
式: \( y(t) = v_0\sin\theta \cdot t - \frac{1}{2}gt^2 \)
ここで、\( \theta \) は投げ出し角度、\( g \) は重力加速度です。放物運動の典型例として、野球の投球や、ビルの屋上から物を投げる場合が挙げられます。最高点に達した後、物体は再び地面に向かって落下します。
放物運動では、以下のような追加の式が使用されます:
- 速度成分: \[ \vec{v}(t) = v_0 \cos\theta \hat{i} + (v_0 \sin\theta - gt) \hat{j} \]
- 最大高さ: \[ y_{\text{max}} = \frac{v_0^2 \sin^2\theta}{2g} \]
- 飛距離: \[ R = \frac{v_0^2 \sin 2\theta}{g} \]
例: 等速円運動
等速円運動は、物体が一定の速さで円軌道を回る運動です。例えば、コーナリングする自動車や、カルーセルの馬が考えられます。この運動では、物体には常に円の中心に向かう向心力が必要です。この力は次の式で表されます:
ここで、\( a_c \) は向心加速度、\( v \) は物体の速度、\( r \) は円軌道の半径です。向心力は物体が円軌道を維持するために必要な力であり、物体が速く回るほど、また半径が小さくなるほど大きくなります。
また、向心力の大きさは以下の式で表されます: